【Deal社内対談】AI開発と、UXの担保を両立させることについて

Miho Yajima
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今回はじめての試みとして、対談形式で記事をお届けします!

対談相手は、Dealで開発を担当している赤塚さん。エクスペリエンスリードとしてプロダクト開発をリードしています。RapiQの開発、そしてクライアント案件の中で、AI開発とUXの担保を、現場でどう両立させてきたのか。井上さんと赤塚さんの対話から、AI時代のプロダクト開発における具体的なヒントが見えてきました。


自己紹介と、プロダクトの背景

――赤塚さん、簡単に自己紹介をお願いします。

赤塚:Dealには約1年前に入社し、最初は会社のブランドコンセプトを立てるところで、組織側を担当していました。出産・復帰後は、「エクスペリエンスリード」というタイトルのもと、プロダクト開発をリードさせてもらっています。

――今日話すRapiQとクライアント案件について、それぞれ簡単に教えてください。

赤塚:RapiQのコンセプトは「ユーザー調査を、ぜいたく品から日用品へ。」です。どんな事業でもエンドユーザーの声が競争優位につながると考えていて。ただ、調査そのものに工数がかかるという課題がどの組織にもある。やりたいけど時間もお金もかかる。その中で生まれたのがRapiQです。

これまで人がやっていたところをAIが担うことで、完成度の高い調査が1日足らずでできる。事業の意思決定における仮説の精度が上がっていくことを目標にしています。UXを専門にするDealだから追い求められる品質があると思っています。

井上:クライアント案件は、まだリリースされていないものもあるので具体は言えないのですが、基本的にはプロダクト・サービスの新規立ち上げか、既存プロダクトの改善、大きくその2つになります。

――この2つの現場で、AI開発とUXの担保をどう両立させてきたのか、具体的に聞いていきたいと思います。
AIを使ってプロダクトを開発する時に、「UXも大事にする」という意識は、最初からありましたか?

赤塚:これは職業病みたいなところもあって、どんな仕事をやっていても基本的に考えています。エンドユーザーの気持ちになって逆算して設計するというのは、常に意識していますね。

一緒に開発していたメンバーも、Claude開発のスピード感に呑まれながらも「UXをちゃんと考えなきゃね」というセリフが口癖になっていたくらい意識づけは日々徹底してました。ただ、AIが出してくるものをプロンプトに細かくUXについて論理的に喋っていくのは無理があって、スピード感を持って開発している中で、複雑な指示をするほどUXとして理想じゃないものがほぼ99%くらいの確率で返ってくるんです。

だからこそあえてUX専任メンバーに入ってもらい、立ち止まって一緒に議論する時間も設けていました。


AI開発とUXを両立させるために

――AIに任せても理想のUXがなかなか返ってこないという話がありました。大変だったことはありますか?

赤塚:あります。開発メンバーが少ないので、マイルストーンに沿ってスピード感を持って進める必要があり、最初からワイヤーを細かく作り込むような進め方は、むしろ避けたほうがよかったんです。
ただ、AIに任せて作っていくと、AIが解釈したUXや、世の中で一般的に使われているUXが「良かれ」と思って出てくるんです。そこからRapiQのコンセプトに合わせて、「こういう体験にしたい」という意図をClaudeにどう伝えて、実際のプロダクトとして実現させるか。ここが最後の詰めとしてめちゃくちゃ大変でした。
さらに、実際に動かしてみると細かい不具合や想定外の挙動も出てくるので、そこを一つひとつ確認して、バグを回収して、理想のUXに近づけていく。この最後の実現フェーズに一番時間がかかりました。

――逆に、良かったなと感じる部分はありますか?

赤塚:基本的には、早いし品質はいいなと思ってやっていました。私はエンジニアでもコードが書ける人でもないんですが、指示が雑でも8割型は拾ってくれるし、修正をかけたところはちゃんと直してくれる信頼関係があった。ただ、指示していないところにバグを引き連れてくることが多く、そこは苦労しました。

井上:細かいUIレベルのユーザビリティの話は、チームメンバーもいるのでアドバイスすることもあまりなかったんですが、RapiQというプロダクト全体でどういう体験を提供するべきかというコンセプトの部分については、最初の頃はちょくちょく話していた記憶があります。

そもそも、このアイデアが最初に出たのって、コンサルで調査をやっていく中で、どうしても2ヶ月かかっちゃう。成長スピードを意識している会社からすると、今知りたいことの答えが3ヶ月後に出てくるって、もう新鮮味がないし、その頃には違う課題が出てたりする。そこのスピード感も一つの体験で、そういうところから話は始まったんじゃないかなと思っています。

――「コンセプトを軸に据えて、そこにUXを寄せていく」というやり方は、クライアント案件でも共通するんでしょうか?

井上:やっぱりスピード感を持ってものを作れるのが一番の強みだと思っています。半年前と今じゃAIモデルのバージョンも全然違うんですが、当時は特に、プロンプトをしっかり書かないと想像するものが出てこないというのが顕著でした。

だから余計に、自分が思い描いているUXをちゃんと言語化しないと、修正回数がすごく増えて、ブレが発生してくる。「こういうプロダクトをこういう形でお客さんに提供したい、なぜならこう」という理由や目的を、しっかり書いてあげないとダメだった。今はもうちょっと文脈を汲むというか、AI側もアップデートされていて、だいぶマシになってきています。

とはいえ、細かいところはラリーを繰り返して詰めていくんですが、最近すごくいいなと思っているのは、最初にコンセプトを入れておくことによって、後から「ここをこう変えたい」と言った時に、「このコンセプトでやっているけど、それやっちゃっていいの?」ということをAI側から指摘してくれること。精度という意味でもすごく上がっているイメージです。


AIに「忘れさせる」ことの難しさ

――AI開発とUX担保の両立が難しかったと感じたことはありますか?

赤塚:あります。AIが記憶して思い出させてくれる能力はいいなと思っているんですけど、意外と難しいのが「捨てる処理」なんです。

一度記憶したことに「忘れてください」と伝えても、本当に忘れてくれているのかが見えない。その状態で新しい情報を上書きするのが難しい。

クライアントワークではこれが特に相性が悪くて、体験を作る中で、お客さん側が物を見ないとイメージできない。だから物を作って触ってフィードバックをもらう動き方をするんですが、細かい修正や言語化できない体験に対する修正が上がってきた時に、AIにそのまま投げても、ロジックが複雑だから綺麗に直してくれない。

例えば質問の順番を前後させたら、それに伴って入れ替わるルールも出てくる。そこまで忠実に指示しないと、出てくる結果が全然違うものになっちゃうんです。

――今回はどうやって乗り越えたんですか?

井上:役割分担ですね。最初から決めていたわけではないんですが、赤塚さんがメインの体験をしっかり考えて、私が実装側から具現化するという形になっていて。両方を1人がやると脳がごちゃごちゃになって、AIにもごちゃごちゃに伝わってしまう。役割が明確だった分、脳的な負担が軽減されて、すごくやりやすかったです。


「100点を出す」ために、残り20%を詰める仕事

井上:もう1つ、別のクライアントワークの話なんですが、大枠の体験やユーザーフローはAIでもしっかり作れるようになっています。ただ、細かいところ、特にデザイン面でなかなか治らないところが出てくる。「いいんだけど80点だな」みたいな。

自分たちとして100点を出すべきだと思っていて、そうなった時に、やっぱりデザイナーが入るとクオリティの質がガッと上がる実感はある。UIレベルではそこまで問題ないんですが、グラフィックとして見せるところは、まだ課題がたくさんあるなと思っています。

赤塚:そうだなと思って聞いていました。うちのブランドコンセプトに「期待を超えて答える」があると思うんですけど、まだAIとタッグを組んでやる時に、それを超えるのはかなり時間がかかるし、バイタリティがいる。いいものを出してくるんだけど、「これじゃない」って、その20%を詰める作業が同じくらいかかるんです。どうしても超えられない壁があって。

井上:やっぱりそれが差別化要素になっていくんだと思うんですよね、世の中的に。「AI使って作れます」はもうどこでもできる話で、そこに体験をどれだけしっかり作っていくかがサブになってくる。残りの20%をどれだけ詰められるかが、かなり肝なんじゃないかな。


AIバンパイア ―― 気づいたら朝になっている

――ちなみに、そうやって細かく詰めていく作業をAIと一緒にやっていると、時間の感覚も変わりそうですね。

井上:そうなんですよ。AIってなんか徹夜でやれちゃうんですよね。海外だとこの現象を「AIバンパイア」と言うらしいんですが、気づいたら外が明るくなってきているみたいな現象がある。AIがなかった時代と比べたら、すごくある気がします。

赤塚:あります。ゲームを攻略しようとしているのと同じ感覚なんですよ。中毒性あるし、1個クリアしたらレベル2に行きたいみたいな。

井上:AIがなかった時代、担当のデザイナーさんに伝えて作ってもらって、それが違ったら「どう伝えたらいいんだろう」「言いにくいな」って多分意識してないけど考えちゃっていた。AIに関してはそういう気遣いが省ける。目的に向かって、ずっとまっすぐ一緒に走り続けてくれるんです。

特に赤塚さんも私も気を使うタイプだと思うから、脳の底を使わずに済んでいる分、体力的にちょっと残っていて、気づいたら朝みたいな。


AIによって、仕事は「なくなる」のではなく「変わる」

――AIとの関わり方って、個人でもチームでも変わってくるんですね。もう少し広げて、組織レベルでAIをどう入れていくかという視点でも、感じることはありますか?

井上:あります。AI駆動開発とかを進めようとしているお客さんがいるんですが、現場と上ですごく意見が違う。現場側は自分の仕事がなくなることに恐怖を感じてAIを使うのが奥手になっていたり、一方で上の人は組織としての効率を上げなきゃと思っている。この溝がすごくある会社が結構多い。

ただ、実際そういう案件に入って思うのは、完全に自分の仕事がなくなることはないけれど、同じ仕事が残り続けることもない。要は仕事内容が変わるということが起きるだけ。

例えば今まで01でデザインを3パターン出していた人が、AIによって3パターン出すまでの効率が上がって、それに対して方向性を示す仕事に変わっているとか。デザインレビュー側になったり、デザインシステムレベルでどう回収していくかを考える部分が変わっていく。

あるお客さんのCEOが「このままだとうちの子たちが将来仕事に迷う可能性があるからこそ、今AIを入れて、AIがある環境でバリューを出せる社員にしていきたい」と言っていて、すごく先が見えているなと。

そういう変化を早めに伝えて、安心感を持ってもらった上で成長してもらう ―― これは案件としてはUXを作る案件ではないけれど、UX関連の仕事をしているからこそ、そこで働く従業員の体験として考えられる。これがうちで働く人たちの強みかもしれないと感じています。


個人からでも、AI活用は始められる

――ここまで組織レベルの話を伺いましたが、最後に、これから現場でAIを使ってプロダクトを作ろうとしているエンジニアやPMの方に、伝えたいことはありますか?

井上:Dealでとても良かったなと思っているのは、全体でAIを導入して、まずはみんな自分で好きなものを作ってみるところから始まったこと。今では実際に案件を受けるレベルにまでなっています。

何かを作る時に、AIに対する知識レベルや使い方の感覚が近しいと、話がすごく早い。赤塚さんと一緒にやっている案件も、コンセプトを作るところは時間をかけて話すけれど、いざ決まって走り出すと、正直ミーティングなく進む部分がすごく増えた。

もし周りにそういう人がいない環境の人がいたら、本当は組織レベルでやれるといいんですが、それが難しいなら「AIってこんなにいいんだよ」と発信していくところから始めるしかない。そこさえクリアすれば、働きやすくなるし、プロダクトのクオリティも上がるし、新しい学びも増える。

だから、もしそういう課題があったとしても、個からの発信を、諦めずやってもらうのがいいんじゃないかなと思います。今のご時世、YouTubeでも無料で学べる場所は腐るほどある。間違いなく楽しいし、「こんなこと今までできなかったのに、できるんだ」という新たな発見が大量にあると思うんです。私自身、いまも試行錯誤の途中ですが、この楽しさを共有できる人が増えたら嬉しいなと思っています。


対談を終えて

――今日の対談を通じて、感じたことがあれば教えてください。

赤塚:AI開発駆動とかデザイン駆動と並ぶ、UX駆動というか、UXとAIの共存みたいなところについて、私たちだからこそ気づけることや、AIを使って解決できる課題みたいな、そういうのについてちゃんと言葉にしていくのって面白いなと思いました。クライアントワークをして、いろんな人を見て声を吸い上げているからこそ分かることだと思うので、そういう視点を発信していけたらいいなと思います。

井上:確かに、普段こういうことって言語化しないからね。いい機会だったよね。

AI時代のプロダクト開発は、まだ答えのない領域です。Dealでは、これからもAIを活用しながら、UXを本気で担保するプロダクト作りを続けていきます。